学部長からのメッセージ
奈良女子大学理学部には二つの学科(数物科学科と化学生物環境学科)があり、各学科の下に三つのコース(数学・数物連携・物理学コースと化学・生物科学・環境科学コース)があります。両学科の各コースはそれぞれが特色ある研究と教育を行いつつ、互いに連携して全体として理学の広い範囲をカバーしています
理学部の教員一人あたりの学生数は一学年につき2名程度です。そうした少人数制の手厚い指導体制の下、学生の皆さんは3年次までの授業を通じて一般教養や理学全般に関する幅広い素養と自身の専門分野に関する高いレベルの知識や技術も修得したうえで、4年次には卒業研究に取り組むことになります。
卒業研究は、学部教育の集大成です。学生の皆さんは、それまでに得た知識と技術をもとにそれぞれが独自のテーマをもって研究に取り組み、新しい科学的知見を得るという、人生の中でも得難い経験をするとともに、その過程で、単なる知識ではない応用・創造力、課題発見・解決能力、論理的思考能力、コミュニケーション能力を身につけます。それらの力は、いわゆる「理系専門職」としてはたらく場合に限らず、社会を構成する「教育された市民」に必要とされる能力です。そうした能力を身につけている本学理学部卒業生は、社会の様々な業種、様々な場面で幅広く活躍することができています。
理学部生、あるいは理学部生を志すみなさんへ。理学部での卒業研究に限らず、研究において大事なのは、「知的好奇心」です。数や自然の世界は、美しさと驚きに満ちています。皆さんには、世界を見渡した時に「これは何?」「どうしてだろう?」と思えるような、鋭い観察力と豊かな感性を大事にしてほしいと思います。理学的な探求の過程はそうした疑問から始まります。そして、答えを見つけるために、仮説を立て、それが正しいかどうかを検証します。仮説を立てたり検証したりする際には、「正しい知識」が大事です。しかし、同時に、「常識にとらわれない力」をもつことも、それと同じくらい大事です(科学の歴史において、「定説が覆る」ことは決して珍しいことではありません)。定説や常識、多数派の意見や権威筋の意見を無批判に信じてしまうのではなく、人の意見を聞きつつも、最終的には「自分の頭で論理的・批判的に考えて判断する」ことを忘れないでほしいと思います。そしてまた、理学的な探求の過程では、様々な場面で他者との協力が欠かせません。本学理学部での学びと研究体験を通して、観察力、知識、論理的思考能力、そして人と協力する力が養えるのは、こうした実践的な研究の体験があればこそ、なのです。
これまで、有名無名の多くの研究者たちが、長年にわたり、「好奇心に基づいて調査・観察を行い、疑問を持ち、仮説を立て、それを検証する」という作業を営々と積み重ねることによって、理学は発展してきました。それらの成果は、自然に対する理解を深め、人々の知的好奇心を満たすことで、人々の暮らしを精神的な意味で豊かなものにするとともに、技術を介して、人々の暮らしを物質的に豊かにすることにも貢献してきました。本学理学部で学ぶ皆さんにはぜひ、そうした大きな力を秘めた理学の歴史的な営みに参加していただき、そうして得た経験と力をもって社会に羽ばたいていってほしいと思います。そしてなによりも、実際に研究に携わり、自然の秘密を解き明かす楽しさを存分に味わってほしい。心からそう願っています。
奈良女子大学理学部へ、ようこそ。一緒に自然の仕組みを解き明かしていきましょう。