研究テーマ
わたしは近代文学、特に夏目漱石の後期作品について研究しています。学部時代、講義や演習を通じて近代文学に興味を持ち、論文作成にあたって、夏目漱石の後期作品を研究対象として選びました。それを選んだのは、明治?大正時代の生活を舞台として、丹念な表現がされている点に魅力を感じたからです。重々しく、時に抽象的な内容を扱う文面の中に、日常の手触りや人間の心模様の一端が鮮やかに表現されているのを読むと、はっとさせられます。作品を解釈するため、先行研究を読み込んだり、表現の一つ一つを拾い上げて検討したりして、作品の言葉に意味を与えていきます。 卒業論文では『行人』を扱い、先行研究では内容的、形式的に断絶していると言われている各章の繋がりについて、登場人物の比較や漱石の日記?書簡などを手掛かりに考察しました。しかし結局、断絶を上手く解釈することができませんでした。また、研究手法についてあまり自覚的ではなかった等、反省すべき点が多々あったので、修士論文では卒業論文での反省をふまえながら『道草』の解釈に取り組んでいます。作品内での「回想」「人間の内面と外面」の問題を研究の主軸に据え、論文作成に取り組んでいきます。