2023年度
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非平衡ダイナミクスセミナー
講演:白石 允梓 (明治大学 先端数理科学インスティテュート)
題名: 社会性昆虫のデータ解析と数理モデル
場所: 対面(奈良女子大学C141)
日時: 2024年3月28日(木)15:00~
概要
社会性昆虫であるハチやアリは、コロニーを効率的に維持するために、コロニー内で必要になる採餌や幼虫への給餌?世話、清掃などのタスクを自律的に分業することが知られている。
この分業は、コロニーを構成するワーカー(働きアリ)が独立にコロニーの状況を判断したり、ワーカー同士でコミュニケーションを取ることで成立していると考えられている。また、分業に加えて必要な仕事量自体を調整する労働量の分配も類似のメカニズムで成立していると考えられている。
このメカニズムは、反応閾値モデルと呼ばれるメカニズムによって理解され多くの実験で検証され確認されてきた。
しかし、これらのメカニズムの実験検証では行動データの観測が十分ではなかった。我々の研究では、
小型タグを用いた自動計測システムを構築し長期間のアリのコロニー内での行動データを計測し大規模データを取得し、
データ解析を行 い反応閾値モデルでは説明仕切れない性質の労働量分配メカニズムが存在することを実験的に示した。
また、反応閾値モデルを拡張したモデルを提案し、実験データを説明するためにどのような数理モデルが必要になるかを検証した結果
について述べる。
研究会
奈良非線形研究会
主催: 科研費基盤C 20K03886 「ペーストのメモリー効果における記憶保持能力の多様性」
代表:中原明生 / 分担:狐崎創
場所: 奈良女子大学 理学部新B棟 B1206教室
日時: 2024年2月21日 (水)
概要
詳細はこちらをご覧ください。
中間発表
講演:青柳 紗月 (奈良女子大学)
題名: 真正粘菌変形体の外力に対する応答
場所: 対面(奈良女子大学B棟1206号室)
日時: 2023年11月30日(木)15:25~15:55
概要
真正粘菌変形体は多核単細胞生物て?ありなか?ら、体全体として統制のとれた振る舞いを見せる。
連結性を維持しつつも体の形を変形させ周囲を隈なく探索し、前端て?はソ?ルケ?ル転換をしなか?ら前進し、後方て?は網目状の輸送管を作りネットワークを形成する。
本研究は、大型の変形体内の圧力勾配に直接外力を加えたときの応答を定量的に評価することで、その行動原理を理解することを目的としている。
これまでの研究では、変形体の動きを一次元的になるように制限し、変形体の進行方向と逆向きになるように外力を印加して実験を行うと、外力に対して速度が10%減少することが分かっている。
本発表では、変形体の進行と同方向に外力を加えた実験や外力が加わった時の変形体の振動パターンの変化について分かったことを報告する。
中間発表
講演:佐久間 絢子 (奈良女子大学)
題名: パラフィンワックスの冷却によって生じる亀裂の研究
場所: 対面(奈良女子大学B棟1206号室)
日時: 2023年11月30日(木)14:50~14:20
概要
本研究では、厚さが一定のパラフィンワックスの層を作り、容器を一定速度で移動させながら加熱した後、一部を氷水で冷却し、収縮により亀裂を成長させる。
その際のパラフィンワックスの温度分布を赤外線カメラで測定しながら、発生する亀裂の様子を観察している。
先行研究では、上から見てドーナツ状の容器を回転させたが、容器の幅が狭く、壁からの熱が影響し温度分布が複雑になっていた。
そのため、本研究では直方形の幅広の容器に変更した実験系を作成した。この結果、温度分布を一次元的にでき、一回の実験で観察できる亀裂の本数を増やすことに成功した。
この装置を用いて、主に容器の移動速度、パラフィンワックス温度?量を変えながら実験を行っており、その結果を報告する。
中間発表
講演:原 明穂 (奈良女子大学)
題名: 水面に浮かぶ粒子の凝集過程のシミュレーション
場所: 対面(奈良女子大学B棟1206号室)
日時: 2023年11月30日(木)14:15~14:45
概要
水に粉を浮かべると、粒子は自発的に集まってクラスターを形成する。簡易的に実験系を構築し実際に粉が集まる様子を観察してみると、
凝集過程やクラスターの最終形状が複雑であることが分かった。本研究では粉が集まるまでの過程に着目し、どのような過程で粉が凝集するのかを数値的に調べた。
これまでの発表では、一次元?二次元のモデルの構築と、シミュレーションによってクラスター数の時間発展の、初期数密度依存性について報告した。
本発表ではプログラムの改良により初期密度を低密度に置いた場合の計算が可能になったためその結果や、初期密度による凝集プロセスの違いについて報告する。
中間発表
講演:山田 光希 (奈良女子大学)
題名: 多層stick-slipモデルにおけるすべりの挙動
場所: 対面(奈良女子大学B棟1206号室)
日時: 2023年11月30日(木)13:00~13:30
概要
地震は地下の岩盤に力が加わり、断層面でずれが起こることで地震波による揺れが生じる破壊現象である。
地震波は断層のずれで発生するが、断層面のフラクタル的構造や粉体や液体を含んだ構造は複雑であるため、
地震の詳細なメカニズムの解明や予知は未だ実現していない。地震波のもととなる破壊現象は地下深くで生じるため、
何が起きているのか直接観測することはできず、高温高圧条件のため実験により地下の状況を再現することも難しい。
そこで、本研究では数値計算を用い、断層面のずれ方について簡単なモデルを作成しシミュレーションすることにより理論的に研究している。
今回は数値計算から得られたすべり方のパターンや摩擦則の結果とそれらの理論的考察の経過を報告する。
非平衡ダイナミクスセミナー
講演:坂口 英継 (九州大学総合理工学研究院)
題名: 大自由度非線形力学系:粘菌と地震の数理モデル
場所: オンライン+対面(奈良女子大学A棟204号室)
日時: 2023年11月9日(木)15:00~
概要
大自由度の非線形ダイナミクスの研究例として
1.多数の粘菌細胞がサイクリックAMPを放出しながら集合して最終的に1つのクラスターを形成してゆくようすの数値シミュレーション
および
2.地震のバネブロックモデルを拡張した数理モデルを用いて余震現象やグーテンベルグ?リヒター則を再現する試みを話す。
集中講義
講演:熊谷 一郎 (明星大学 理工学部 総合理工学科)
題名: キッチンで考える地球惑星ダイナミクス
場所: 奈良女子大学理学部C棟C141教室orF棟、G棟実験室
日時: 2023年11月6日(月)~8日 10:40~17:00
概要
本講義では、身の回りの物を使った流体実験をしながら地球科学現象を支配する
熱輸送や物質輸送の物理を考える。具体的には、地球流体力学、レオロジー物性、
可視化実験などに関する知識や考え方を修得する。講義では実際に実験を行い、
目の前で起こる現象について、共に考える実験講義を展開する。
非平衡ダイナミクスセミナー
講演:北畑 裕之 (千葉大学 大学院理学研究院)
題名: 密度差振動子の分岐現象と同期現象
場所: オンライン+対面(奈良女子大学H棟402号室)
日時: 2023年7月27日(木)15:30~
概要
密度差振動子は、二重の容器に入れられた低密度流体と高密度流体が小さな孔でつながれたとき、
孔を通る上下流が交互に起こる現象であり、リミットサイクル振動子のモデル系として広く研究されてきている。
本研究では、まず、二次元流体シミュレーションにより、密度差振動子の振動を再現し、分岐構造を調査した。
次に、等価な密度差振動子の結合系のシミュレーションを行った。その結果、2個の結合系では位相差がπとなる逆相同期、
3個の結合系では位相差が2π/3となる三相同期、4個の結合系では、2個ずつの位相が等しくなり、
それらがπの位相差をとる2:2部分同期の状態が安定であることがわかった。
また、外側の容器の水面の高さを変化させる摂動を加えた時の位相のシフトを数値計算で求め、
位相応答曲線を得た。この位相応答曲線から結合系の安定モードについて議論し、数値計算で得られた結果と一致する結果を得た。
さらには、不安定な同期状態を数値計算により実現することにより、どの同期状態が安定であるかの基準を議論した。
(1) Nana Takeda, Naoko Kurata, Hiroaki Ito, and Hiroyuki Kitahata, Phys.Rev. E, 101, 042216 (2020).
(2) Nana Takeda, Hiroaki Ito, and Hiroyuki Kitahata, Phys. Rev. E, 107,034201 (2023).
非平衡ダイナミクスセミナー
講演:小谷野 由紀 (神戸大学大学院人間発達環境学研究科)
題名: 自発回転する粒子の運動形状依存性?同期現象
場所: オンライン+対面(奈良女子大学理学部B棟1206号室)
日時: 2023年5月16日(火)13:00~14:30
概要
自己駆動粒子の自発運動は、粒子や周囲環境の対称性に対応した運動様相が見られる。
一般に、非対称な系ではその非対称性に応じた運動方向に運動し、対称な系では自発的な対称性の破れに
よって運動方向が決まる。では対称な系にわずかに非対称性を導入した場合には、どのように
運動方向が決まるのだろうか?樟脳を含むプロペラ型の回転素子を用い、カイラリティの度合い
を系統的に変化させたときの粒子の回転運動の様子を調べると、どちらにも回転可能だが回転
方向によって角速度が異なることが確認できた。数値シミュレーションによってこの系で見られる
回転運動の分岐構造を調べると、対称な系でみられる分岐構造が歪み、不完全分岐と呼ばれる
分岐構造に変化していくことがわかった。
また、樟脳を使った回転子を複数並べると、樟脳の濃度場を介した斥力的な相互作用がはたらく。
重心を固定した樟脳回転子を2つ並べた状況を数値シミュレーションすると、回転のタイミングが
揃う同期現象が見られ、樟脳回転子の距離に応じて同相?逆相同期となることが明らかとなった。
2つの回転子の位相差について位相結合関数を導出すると、同期のタイプの距離依存性を説明する
ことができた。距離依存的に安定な同期状態が変化する直感的な理由についても紹介する。
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奈良女子大学,
理学部数物科学科, 非平衡ダイナミクス研究室
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