那智参詣曼荼羅図
闘鶏神社所蔵 (奈良国立博物館寄託)
縦152.0cm×横165.0cm 紙本著色
各地の「参詣曼荼羅」の研究は、いまから30年以上前の1987年、いまはもうない大阪市立博物館の特別展「絵は誘う、霊場のにぎわい」の開催によって、一挙に火が付いた。そこには「参詣曼荼羅」と名のつく大型の吊り幅型式のものだけでも確認できたものだけでも30数点に達し、描かれた対象も、那智?紀三井寺?粉河寺?施福寺?葛井寺?清水寺?成合寺など全国の25ヶ寺に及び、圧倒的な迫力だった。
中でもいちばん注目を浴びたのが多彩な画面構成が光る『那智参詣曼荼羅』で、その中でも中世に遡る成立が明らかな、裏面に慶長元年(1596)の墨書銘の転写を持つ、田辺市闘鶏神社所蔵の一本であった。
今回、その闘鶏神社のご好意によって、この稀代の名品を公開できることとなった。
画面右端に描かれる那智滝(飛滝権現)には、文覚と二童子の姿が描かれ、画面下には補陀落渡海船が描かれる。画面左下の「二瀬橋」の手前の桜の前には、他の作例から見て、和泉式部といわれる女性が描かれたらしいが、闘鶏神社本では現在は剥落が激しく、その姿を確認することはできない。
〔参考文献〕
黒田日出男
「熊野那智参詣曼荼羅を読む」『思想』740号1986.2
山本殖生
「那智山古絵図の世界-那智参詣曼荼羅の読図に向けて-」『熊野歴史研究』3号1996
「那智参詣曼荼羅の物語図像」『熊野歴史研究』4号1997