仏涅槃図 平安末~鎌倉時代 重要文化財指定
絹本著色 中幅 123.0cm×93.3cm
右幅 124.3cm×44.5cm
左幅 124.3cm×44.5cm
国内では他に例を見ない三幅型式の涅槃図であり、左右幅にはそれぞれ賛が色紙型に書かれ、また画中に計39の短冊形があって描かれた菩薩名などを示しているなど、特徴的な形態を持っています。
中野玄三氏は、右幅の賛でも文言が現行の『大般涅槃経』と差があり、また息子の釈迦の涅槃を天上の摩耶夫人に伝えるのが、左幅の賛でも、絵柄自身でも、通例の阿那律でなく優婆離(うばり)となっており、そのことがスタイン蒐集の敦煌写本の『仏母経』と一致することから、「この仏涅槃図には、この図の原本になった(中国)大陸の粉本(手本)、下書きがあったのではないか」とされています(『学叢』第一号1979.3)。
中幅上部右の二つの短冊形のみが、他のそれが菩薩名などを示すのに対して、「(優)波離、昇忉利天、報告摩耶」、「摩耶夫人、従天来下」と優婆離の昇天報告と摩耶夫人の来下という事柄を叙しているのは興味深く、その部分が重点的に涅槃会で説かれたのであろうことが推測されます。
中幅下辺には、迦陵頻伽、獅子、象、虎、猿、牛、鹿、イノシシ、ウサギ、ヒツジ、サイ、亀、猛禽、オウム、ガチョウ、キジ、山鳥などの姿が見えます。